―― 以下、全文書き起こし ――
岩上安身「皆さんこんにちは。ジャーナリストの岩上安身です。選挙特集プロジェクトと題しまして、各政党の動き、我々なりにずっと追い続けております。本日は『みどりの風』代表の谷岡先生にお話をうかがいたいと思っております。先生、よろしくお願いします」
谷岡郁子氏「よろしくお願いいたします」
岩上「『みどりの風』は代表、党首、どちらが良かったんでしたっけ?」
谷岡「普通は代表って呼んでます」
岩上「ですよね。すいません。谷岡代表です。谷岡先生、お時間がある程度限られているというので、テンポよくポンポンとお話をうかがっていきたいと思います。
各党の公約をうかがってはいるんですけども、その前に、先日、安倍総理に対して問責決議案を出す(※1)という一幕がありました。
(※1)野党3党 安倍首相への問責決議案を提出< 2013年6月26日>日テレNEWS24
これ、それぞれに言い分はあるのかもしれませんが、その問責決議案。憲政史上初、女性3人で3党共同提出したと。『みどりの風』と『生活』と『社 民』ということで。ここに至る経緯というのは、そもそも自民党の側に問題があるんだと。自民党の側が議長に対して不信任を出し、なのに(審議に)出てこな いということになり、それはおかしいじゃないかということで、この問責を出したというふうにお聞きしてますが、経緯を教えていただけますか?」
谷岡「はい。6月14日の時点で、すでに文書で必要な署名の数を揃えて、そして予算委員会の要求をやってるんですね。12時だったかもしれません が、だいたいそのぐらいです。ですから、10日近くにわたって、ずっと自民と折衝をして、なんとか予算委員会を入れようとしました。
サミットの報告もなかったし、この間、いろんな問題が起きていた状況のなかでは、やはり参院選前に争点を明確化するために、予算委員会をやっておく必要があるということだったんです。 それに対して、自民は逃げまくったというのが真相ですね。
それで、何度も何度も理事懇(※2)みたいなことをやって、説得をして、といったけれども、調整がつかない。そして、そのままその委員長は、一定 数の署名が集まって、文書で要求をされた場合に開かなきゃいけないわけですから、今度、反対に委員長が法律違反になっちゃうんですよ。
(※2)理事懇: 理事懇談会の略称、与野党の委員会理事が非公式の場で委員会の日程や議案等の折衝を行う場合に開かれる。日程や議案の他に各政党の質疑時間の調整も行う。 基本的には委員会所属議員の数で質疑時間が割り当てられ、少数政党は不利となる。その場合、与党が野党に時間を回したり調整も行われる。理事懇の折衝が纏 まらない場合委員会の開会を延期することもある。逆に理事会は公式の場で決定された案件はすべて委員会に反映。理事会は委員会開会前に必ず開催、当日の委 員会の進行や協議事項の確認等が行われる。(蓮舫参議院議員HP用語解説より)
委員長は24日の日にやるんだということを、21日の朝に決めました。そして、私たちはお昼ごろから質問通告(※3)を始めたんです。そうする と、政府は質問通告を受け取らないと。質問通告を受け取らないということは、質問に対して答弁する気がないと、政府がその時点で表明した。
(※3)質問通告:国会の委員会審議などにおいて、質問者が事前に、質問の趣旨を政府に通告すること。答弁の準備をさせることが目的。地方議会などでも行われる。(kotobankより)
つまり、国会で説明責任は果たさないとすでに表明した。一番早い人だと12時ぐらい。そして、そのあと議長の不信任案が5時頃に出て来ました(※4)。つまり、5時間にわたって、議長の不信任案が出る前から政府は答弁を拒否するよ、という姿勢を見せていたわけです。
(※4)与党提出の平田参院議長の不信任案を否決(2013年6月26日 読売新聞)
そして、24日の日の朝、月曜日ですけれども、それはもちろん委員長出てこいということはずっとやったわけです。私たちも待ったけれども、出て来なかった。そういう状況のなかで、すでに確定していて、10日すぎに予算委員会を開きたいということの要求が出ていて、と。
それで、ずっと待っていたけども、開けなかったけども、やっと開くことにした。それを、だからある意味で止めるために議長不信任が出てきたようなものだったわけですよ」
岩上「なるほど。後出しで、取り繕いのために、自分たちの言い分を正当化するために、後出しで出したと。自民党は」
谷岡「そうですね。この問責決議案がなぜ重要だったかということを言いますと。それで、25日も開くことにした。でも、やっぱり出て来なかった。それで26日が最終日ですから、25日の夕方に、これはもう問責を出すしかないね、という話をしたわけです。
なぜ、そんなことにしたかというと、私たちは憲法99条で、総理ももちろんですけども、大臣だとか、国会議員も憲法の擁護義務というのを負ってます。つまり、憲法が守られないような状況になったときには、介入しなきゃいけないということですよ。
総理が憲法を破ったかもしれない。総理が自衛隊の総指揮官でもありますから、自分を憲法の上に置いちゃうような事態になっちゃったら、これは専制国家の出現で、もはや立憲政治でも法治主義でもなくなっちゃうわけです。
その危険性というものは、私たちは、擁護しなきゃいけないということのなかで義務を負ってる。その疑義があるだけでも、これはやっぱり不問に付すわけにはいかないということだったんですね。
そのために、私たちは問責決議案を夕方25日に出したということなんです。これは、軽くみてもらっては困るんですよ。憲法のある条文を破れるとい うことは、どんな条文でも破れるということでもありますし、また国会が、国民から選出された代表たちの集まりであるということで、国会への説明責任という のは、国民への説明責任。
だから、国民主権が維持されるわけです。私たちの憲法違反に対する敏感さというのは、一般国民の敏感さとは、やはり次元を別にするものでなければ ならないと。我々はある種の権力があるからこそ、だからそれだけ憲法違反を恐れなきゃいけないということなんですよ。それで出しました。
それを正当だとみなしたから、参議院は可決したわけです(※5)。つまり、総理が憲法違反を犯した可能性が高いですよ、ということを言ったわけで すよね。これは、由々しき事態ですよ。この間、海外の大使館だとか、それから海外の特派員たちが、私のとこにも連絡してきてますよ。
(※5)安倍総理の問責決議案可決へ 重要法案は成立困難(06/26)テレ朝NEWS
日本はいったいどうなってしまうんだと。戦前に戻る気かと。これ、専制国家の出現が出てきてるんじゃないかと。とんでもないことになってるんじゃ ないのか。本当に日本は今でも民主主義の国家なのかというような疑義まであって、それをすごく大きな疑問点を突き付けている」
岩上「それは、自民党の改憲草案というものは、たいへんとんでもない代物で、憲法を根本からひっくり返すようなもの。立憲主義を根底から否定するよ うなもの。そんなものを掲げている。その総理が、この国会の出席に関連して、違憲行為を行なった。こういうことと繋がって、その海外の人たちの疑念という のは膨らんでるということですか?」
谷岡「もちろん、そうです。憲法63条というのは、自民党の案によると、すでに国会に来て説明しなければならない。ただし、職務の都合で行けない場合は、その限りではない、と書いてあるんですよ。
それは、ある意味で総理が判断するわけだから、総理が行きたくないと思えば、忙しいと言って、来なくていいということになってしまえば」
岩上「これは改憲草案ですね」
谷岡「改憲草案ですよ。総理は、だから国会で説明責任を必ずしも負ってないということになってしまう。ということは、安倍さんはすでにもう改憲したつもりになって新しい案に基づいておやりになったのかなとすら、見えてしまうわけですよね」
岩上「改正はすでに終わっているぐらいのつもりで」
谷岡「それを問題で、いまおっしゃったけれども、新しい自民党の憲法の草案というものは、これは学者なんかで指摘している人は、中華人民共和国の憲法に一番良く似ていると言っています。
つまり、国民の自由だとか、それから権利である主権者であるものは、もう基本的には、これは束縛してはいけないものだという民主主義の原理をひょっとして分かってないんじゃないの?というのが、海外の疑問なんですよね。
まったく民主主義の基本の基本の成り立ち。この原則が破られてしまったら、日本は民主国家ではなくなりますよというふうになってしまっていると。そこなんですよ」
岩上「そういう懸念というもの。世界から見る日本に対する厳しい目。これは、我々は感じてるんですけども、大手のメディアなんか、本当に感じたよう な報道もないし、それから自民党にも総理もないし、政府与党にもそういう素振りもないし、当然そういうことですから、よく知られない。伝えられない。国民 にも緊張感がない。
だけれども、外の目はたいへん厳しくなっていってる。この孤立感と内側の鈍感さ、この落差が開いていることにたいへん気になってるんですけども、そのあたりはいかがでしょう?」
谷岡「ええ。私もまったく同感です。ですから、憲法の問題で言いますと、例えばいろんな議論があると思います。でも、例えばいま憲法改正。それから第9条を触る。そういうことをやろうとしたら、戦後築いてきた平和国家としての日本への信頼というのはゼロになりますよ。
そして、国際交流だとか、外交だとかをいくらやろうとしましても、信頼のない国というものが相手としてどうみなされるかと。これは、国益から考えても、大変なマイナスになっているということは言えると思いますよね。
今の憲法は『日本国民は』というのが最初の言葉であり、それが憲法のいわば作った人々ということであり、そしてそこに国民主権というのがあるわけ ですよね。ところが、自民党の案だと『日本国は』になってしまって、要するに国家のための国民なのか、国民のための国家なのか。
近代民主主義というのは、国民が主人公であって、国民のための国家。だから、リンカーンが言ったように、人民の人民による人民のための、というこ となわけですよね。それが、その国家という得体のしれない。それっていったい何を意味するのかもよく理解できないものに置き換えられてしまうことの危険 性。 これは、私たちはもっと敏感にならなきゃいけない。そして、そのへんのところを今メディアの問題をおっしゃったんだけれども、やはりもう少し、例えば表層 的なところで見ないでしっかりやんなきゃいけない。
だから、私たちの今回の問責というもの自体が、そういうことに対する議論を提起するためにも行なった。これは、他の党がついてきてくれるかどうか分かりませんが、小さい党3つで女性の代表ばかり、あるいは代表格が集まってやったわけですよね。
その時にも、男の人たちは、これはパフォーマンスに終わっちゃいけないからとか、あるいは通らないかもしれないものを出すわけには、と。私たちはそういう問題ではないと。
こういう次元の問題ではなくて、ここをスルーしてしまって、容認してしまったという前例を作ってしまったら、とんでもないことになりかねないから、私たちは通ろうが通るまいが、これは出さざるをえないものなんだと。
これが、国会議員としての私たちの義務なんだということで一致しまして、そして、だから次の日、国会議事堂で本会議が始まるところで、初めてまだ 賛成討論を誰がするか分からない。名前入りではないものがカッコ民主、カッコみんなの党と書いてあって、つまり、賛成討論をしてくれるってことは賛成して くれるんだということが本会議場に入って初めて分かった。
それまで私たちは通らないかもしれないと。でも、歴史に、これを黙認したということは残せないということで、あれをやりました」
岩上「なるほど。いやあ、そういうふうに筋道だってお話をうかがうと、本当に大切なことだったし、またそれをギリギリのところで判断しておやりいた だいたと。新聞の記事だけ読んでたら分かんないんですよ。ただの泥仕合をやってるみたいな。本当に。やっぱり生でお聞きしないと分かんないですね」
谷岡「でも、本会議では、そういう議論は出ましたし、あそこで聞いた人たちは分かるはずなんです。だし、議事録を見ていただければ分かります。重要法案が潰れたという議論に、あそこからなっちゃったんですけども、憲法以上の重要法案ってなんですか?
どうもあれは生活保護を削る法案と、それから電気事業法の改正案が中心でしたから、そこかなって思うんですね。その電気事業法案に関しては、たとえば発送電分離が潰れたみたいな話がありますけど、発送電分離はあの法案に一つも書いていません。
それで、第3段階まで、1段、2段、3段と出てくることになっていて、今回、1段目なんです。3段目に発送電分離が書いてあります。2段目に自由 化が出てくることになっています。でも、自由化の第2段が出てくるのは、来年の国会なんです。その次の年の国会に発送電分離が出てくるわけです。 もう、みんなの党と私たち一緒に発送電分離案も出したんですけど。法案として。だから、何もこれ3つに分ける必要はない。なぜそれを3つに分けたか。そし て、第1段だけ滑り込みで出してきたか。
実は、あの内容を読むとよく分かります。つまり、あれは原電温存法案であり、そして再稼働促進法案なんですよ。どういうことかというと、広域になにかあったときに、電気が足りないときに、融通する。それに対して政府が指示できるというのが主な内容です。
これが、第1段はそれしか書いてないんです。今までは、10電力会社が、いわゆる融通の責任を負ってたんだけど、今度2つ新たな人たちを、融通義 務を負った人たちとして指定しますと。それが、大間のJパワー(※6)。たしか大間だったと思いますけども、Jパワーと、それから原電なんです。
(※6)Jパワー(電源開発): 電源開発促進法に基づく特殊法人として52年、政府と電力9社の出資で発足。電力不足克服や国内炭の利用促進のため、石炭火力や大規模水力など割高な電源 開発を担った。全国に水力59カ所、火力8カ所の発電所があり、電力大手10社に電力を卸販売。約2400キロの送電線網、周波数変換所など基幹設備も保 有。04年に東証1部上場。政府は保有株式をすべて放出、完全民営化。(kotobankより)
特に、原電の場合は、あそこは原発しか持ってない。火力発電所も、例えばダムも持っているわけじゃないですから、あれを入れたということは、原発 を動かしますよということなんです。しかも、今、ずっと止まってますよね。だから、ずっと1ワットも動かさないで、各電力会社があそこを何とか維持するた めに、お金を払い続けている。
でも、それもおかしいじゃないかということで、存亡の危機にあります。でも、この法案をいま通してしまえば、原電は温存されるんです。なぜなら ば、この電気事業法に規定された、いわゆるいざというときの電力の融通のなかの一部に組み込まれているんだから、ここは潰せないよという形で正当化されて しまうわけです。
しかも、電力の逼迫というのは、足りない足りないって、去年の夏だって一昨年の夏だって、足りてたわけでしょ。だから、本当は実際は足りてるのに、足りないということを政府が言い立てたら、そしてだから動かすんだと言ってしまったら再稼働がOKになっちゃうんです。
その意味で、原電温存法案であり、原発再稼働法案だと。だからこそ、誰かにとっては重要法案だったんだと思いますよ」
岩上「なるほど。これらが止まったということは、だからかえって良かったんじゃないかという考え方もできるということ。それから、しかし数日間で あっても、貴重な期間、この政府与党のこれまでやってきた政策がどれほどのものであったのか。また、ここは問題ではないのか。丁々発止、議論をする機会を 失ったというのはいかにも残念なことだと思うんです。
もし、これ安倍総理が出席されていたら、谷岡さんは何をご質問になって、どこをどう突こうと思ってらしたんでしょうか?」
谷岡「予算委員会がもし開かれていたら、ということですか?」
岩上「やっぱりアベノミクスなのか、それともエネルギー問題なのか、それとも安全保障問題なのか、あるいは憲法問題なのか、どれも大事なことかもしれません」
谷岡「はい。私はやはり原発の問題と、それから被災者の問題を取り上げたというふうに思っています。被災者を置き去りにする社会というのは、恥ずかしい社会です。そして、これは単に被災者だけの問題ではなくて、国家と国民の関係の問題でもあります。
国民は税金を払わなきゃいけない。法律を守らなければいけない。でも、その一方で国が国民の命や財産を守る。それが実はこの原発事故ではできなかった。
そして、むしろ国は加害者側であるのに、できるだけ被災者を少ないことにし、福島県内に限られることにし、そして、甲状腺がん、子供のもの以外は、関係ないと言い、そして同時に、地域的にも対象もすごく限ってしまった。こういうことがありますね。
そういうことの理不尽ということで、子供被災者支援法(※7)を作ったんだけど、それが1年以上放置された。放置された状況の要にいたのは、ツイッター事件を起こした復興庁の参事官であった。
(※7)子供被災者支援法: 福島第1原発事故被災者の健康不安や避難生活の負担解消を目指す「原発事故子ども・被災者生活支援法」成立から21日で1年。ところが法に基づく支援は、 前提となる基本方針を国が定めていないため、まだ始まっていない。ツイッター暴言問題で同法担当を更迭された復興庁参事官のツイートには、基本方針の「骨 抜き」を示唆する内容も。被災者に支援が届く日は見通しが立っていない。毎日新聞2013年06月22日東京朝刊クローズアップ2013:子ども・被災者 生活支援法 成立1年、理念倒れ
その人たちは、被災者たちを『左翼のクズ』というふうに呼んでいた。自分たちが加害者なのに、まるで私たちが質問をぶつけたりすると被害者かのように、『被弾なう』なんてことを言っていたと。
この倒錯した政府の有り様というもの。そしてそういう形の中で被災者たちが救われずにいるということ。これについてはもう一度はっきりさせたかった。そして、与党の政調会長があの事故で死んだ人は一人もいないと」
岩上「高市さんですね」
谷岡「そして、この6、000人ぐらいの、あの3.11の関連死と言われている人たち、そのうちの半分以上、福島県が占めているんですね。津波で亡 くなった人、家族を失った人で考えれば、宮城県だとか、岩手県のほうが圧倒的に多いのに、関連死の半分以上が福島であるということは、明らかにこれ原発事 故の影響ですよね。
原発事故によって亡くなった方々であるわけですよ。しかも、国会事故調は、6つの病院から運ばれた人たちが、避難をしなければいけなかったがため に、その途上で何十人も亡くなっているということを明快に書いてます。国会が作った事故調。国会議員には報告書は配られました。どの国会議員も読んでるの が当然です。
なのに、与党の政策をまとめる人は、それを読んでいなかったんですか?私は、そういうことを言うつもりだったし、またよく話題になりましたね。もんじゅで1万件以上の機器の点検漏れがあった。
これ、私、考えたんですよ。点検漏れっていうけど、いったいいくつ、そもそも点検することになっていたうちの1万件なのかなと思って調べました。 規制庁に問い合わせたら、全部でJAEAの、いわば点検表には、3万9000の機器が載っていると。そのうちの1万件あまりが未点検であったと書かれてい たんですよ。
それ4分の1以上なんですよ。ええ?と思っていたら、その後に、今度は東京新聞が、もう2300点検されていなかった(※8)。これで約12800ぐらいになったんですよ。3万9000のうち。
(※8)新たに2300の点検漏れ もんじゅ、保安検査で報告(2013年6月21日 47NEWS)
つまり、30%ぐらいの機器が実は未点検であったと。私はそれを読んだ時に、神に感謝を祈りたくなりましたね。よく今までなんにもなかったもんだ と。そして、あのJパークでの3日間、換気扇を回し続けた事故(※9)。あそこの時には、6つの小学校で外で子どもたちが運動会をやっていた。
(※9)平成25年5月23日(木曜日)午前11時55分頃に東海村の日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機 構が共同運営する大強度陽子加速器(J-PARC)ハドロン実験施設において、ビームの取出装置の誤作動により放射性物質が生成され、施設内(管理区域 内)に漏えいするとともに、排風ファンを稼働したことにより施設外(管理区域外)にも漏えいしました。(茨城県HP J-PARCハドロン実験施設における放射性物質の漏えいについて)
私も学生時代、科学をやりましたが、外にいかに影響を及ぼさないかということは、最初に叩き込まれることでした。つまり、科学者たちとしての基本 の基本ができていない人たちが、あの危険な機械を触っているというこの事実をどう考えて、そして、それでも世界一安全な原発として輸出をお続けになるつも りなのか。そこを私は聞きたかった」
岩上「これは本当にきちんとお答えを聞きたかったところなんですけれども、でもこのことを論じていくと時間がなくなってしましますので、これはやっ ぱり『みどりの風』が大勝したらば、議席をガッと握って、国政に影響を与えるようになったらば、我々はこうしていきますという項目をお話をうかがっていっ たらいいと思います。
せっかく今、原発の話が出ましたから、まずは原発がらみで、およびエネルギーということで、掲げている公約をご説明いただけたらと思います」
谷岡「はい。その前に『みどりの風』はやっぱりリアルな緑でありたい」
岩上「リアルな緑」
谷岡「そういうことをすごく考えるわけです」
岩上「これは、もう一つ『緑の党』がありますけど、そことは違うということですか?」
谷岡「いや、別にそうじゃなくて、永田町のなかには、正しいことを言っている政党はいくつもあると思っています。しかし、じゃあ現実を動かすという ことについては、熱心ではないな。そして、そういう意味において、正しい理念をしゃべっていらっしゃるんだけど、その具体性だとか、現実性だとか、それか ら国民とともに変えていく努力とかいうことについては、私たちにお任せください民主主義的なところが、すごく大きいというふうに思ってるわけですよ。
私が中心になって作った子供被災者支援法。あれは、今回の私たちの候補でもあるんだけど、井戸川さんも含めて、被災者たち自身にもずいぶん勉強会に来ていただいて、彼らの知恵も含めてできた法律。
支援者たちも入ってできた法律。そして、その海外のチェルノブイリ関係の大使館の大使までお入りいただいて、勉強会を重ねて入った。
つまり、やはり政治の見える化。現実の分かる化。そういうところから、政治の、いわば国民と一緒にやっていく。これがポスト311の、これからの政治の有り様だというふうに私たちは思っているわけです。
だから、一つ一つの政策も大事なんだけれども、やはり政治姿勢として、これまでの、私たちにお任せください的な、全部自分たちでやります。そんな ことはできないですよ。特に被災者の問題なんか、一番よく分かるのは、分かったつもりになってもやっぱり分かってないというところがいっぱいあるわけです よね。
そういうなかで、真に国民と対話し、国民と共同しながら作っていく日本の民主主義。これを私たちは、『みどりの風』は共生社会を作るということのなかで一番強く求めてる。
そういう考えに立って、一つ一つの政策を作っていく中で、原発問題。これは、そのためにそういう候補を用意して、被災者自身の声というものを体現するような人がいる中で、しっかりとした被災者救援をやっていきたい。
それから、原発も事故の片付け、あれをなかったことにして、ここからの問題、考えられない。だから、あれは国が責任をもってサイトは東電から切り離して、別会社にして」
岩上「サイトを切り離して」
谷岡「はい。あそこで働く作業員は全員、准国家公務員として、何かあった時に、しっかりとした福利厚生だとか、恩給が受け取れるような。ある意味で彼らは戦士ですから、私たちの安全を守ってくれている」
岩上「軍人と同じように恩給と」
谷岡「はい。そういうことまで含めて考えるような体制を作って取り組んでいかなければ、国家として恥ずかしいと私たちは思っているところです。そして、脱原発をもちろん私たちは強く主張してますけども、止める、やめる、片付ける」
岩上「止める、やめる、片付ける」
谷岡「はい」
岩上「止めるというのは、何を止める?再稼働をさせない。やめるというのは」
谷岡「廃炉」
岩上「廃炉のことですね。なるほど」
谷岡「そして、片付けるは、使用済み核燃料だとか、それから廃炉から出たゴミだとかをどうするかという。これを、再稼働しないというすぐにできるこ とと、何百年、何千年できるんだか分からないことをごっちゃになって話をしてるから、この間、衆院選でもどこでも、話が錯綜してきたと私たちは思うわけで す。
ですから、止めるは、すぐに止めますよと。だけど、やめるというのは、廃炉は法的にもやらないと、二度と再稼働しないということを保証できないわ けですし、それをやるためには、今やると不損金がものすごく大きいから、例えば電力会社が潰れる。そうすると、彼らは当然やりたくない。
例えば、廃炉を宣言しても、そのあと20年にわたって、減価償却費を償却を分けてできますよとか、会計基準を変えたりとか、そういうことをいろいろやったりとか、そして、ある種の廃炉を決めることの支援を盛り込むとか。
今、阿部知子さんを中心に、廃炉法案を日本は作ってるんですね。そうやって電力会社もやっていける。それから、地元の自治体なんか、立地自治体と言われてるところが、ちゃんと今後は産業振興できていくような、そういう支援。
そういうものを含めて、現実的にソフトランディングできるような形にしていかなきゃいけない。そういうものの準備をちゃんとやり、そういう形でき ちっとやっていくことをしっかりとやろうとすると、だいたい2023年には、今から10年後ですね。私たちはすべての炉を廃炉という形で法的にやって、法 的に着手することが可能なんじゃないかというふうなことを考えているわけです。
そして、片付ける。これはもう本当にさっきも言ったように何百年も、場合によっては千年単位でかかることです。それを安定的にどうやってやるの か。まだ、ない科学技術も含めて、そこに対して、どういうマクロの、そして超々長期的な計画というものを立てていくのか。どうやって、人類全体に知恵をそ こに向けていくのかということは、まだまだこれからの話しであって、でもそれに今、着手しなければならないんです。
ですから、そういうことで、どういう要素が必要なのかという整理だとか、そういうことをしっかりやっていく。具体的、現実的にそこへ行けるように取り組んで行くということを私たちは約束をします」
岩上「これは、たいへんな話ですけれども。実際にやるとしたら、やはり多数を形成しないといけない。その多数を形成すると、現状『みどりの風』が候 補者の数から見ても、すぐに多数は形成できない。となりますと、やはり他党との合従連衡とか、協力というのは少なくとも必要になりますよね。
単純な数合わせの話。再稼働、賛成か反対か、ぐらいだったらば、その場で、国会でどっちに投じてもらうか、ということで、声を掛け合うという程度 で済む話かもしれない。これだけのビジョンだと、もうビジョンの段階から、同じような考えを共有する党がどこにいるか。議員がどこにいるか。
社会的な勢力として誰がいるのかということを考えなくちゃいけないと思うんですけども、今おっしゃられたのは、止める、やめる、片付ける。すごく非常に鮮明で明確で分かりやすいんです。
分かりやすいんですけども、これとおんなじ、そして具体的なプログラムを考えている政党、他に力を合わせられるところって、どこかありますか?」
谷岡「はい。私たちは、いま政党っておっしゃったんだけど、永田町だけで見る必要はないと思っています。そしてまた、国内だけで見る必要すらないと 思っています。こういうものは、だから私たちがこの参院選を終わったら、さっきも言いましたけども、例えば、チェルノブイリ関係の国々の、実は知恵も子供 被災者支援法のなかには入っています、すでに。
そういうことを今はできる時代だと思っているんですね。ですから、やはり超党派であると同時に、永田町の壁を超えた、そして学会、学術会、それも 日本だけではないインターナショナルな、そういうフレームというものを私たちはみんなで作っていかなくちゃいけないというふうに思います」
岩上「いまその動きっていうのはなにか、着手され始めているものありますか?これからって感じですか?」
谷岡「まず、例えば、止める、やめるの、やめるの部分は阿部知子さんが中心になって、と言いましたけども、これはもちろん超党派の議員たち。それに関心のある人たちが集まってやっているわけですよね。
同時に、そこに研究者たちもなかに入ってやっているわけです。ですから、そういうものを核にしながら広げていく。やはり、この福島の事故というも のは、国際的にもたいへんな関心がありますし、いろんな国々からも、政府はずいぶん断ってますけども、いろんな支援の申し入れなんかもあるんですよね。
そういうところを政府がどうしても受け入れないのであるならば、その外側であっても作っていく事はできると思います」
岩上「なるほど。分かりました。TPPの話をうかがいたいと思います。TPPに関しては、これまたエキスパートの舟山さんがいらっしゃったりとか」
谷岡「あと山田正彦さん」
岩上「あ、そうですね。山田さんが入られましたね」
谷岡「TPP反対の。ですから、私たちは少数で、小さな党ですけども、本当のプロ集団としての今回、選挙に望ませていただいてますよ」
岩上「たしかに。舟山さんがいらっしゃって、そこに山田さんが入るとなると、本当に民主党から離党して、そして、難しい選挙を戦って、議員ではなく なって、でもずっと貫かれているという意味では、確かに本当に本物。本当にこのTPPのことを考え続けていらっしゃる方だなと、山田さんに関しては思われ る。
そういう意味では、『みどりの風』のTPP反対というのは本物だろうなというふうに思うんです」
谷岡「『みどりの風』は本気集団ですよ」
岩上「ほうほう。他にも全部そうだと」
谷岡「もちろんですよ。だから、私たちは国民に嘘をつく不誠実な政党員ではいられないということで、党のサラリーマンなんかやってられないよという 信念で飛び出た連中であり、それは国民新党からであれ、社民からであれ、そういうことで集まってきている猛者ばかりの、だから筋金入りの信念の、そして政 策通が集まっている、それが『みどりの風』です」
岩上「なるほど。TPP、ずばり反対ということだと思いますけれども、これは、どうして反対なのか。それから、どうあっても入れという圧力は、これ かかっているわけですよ。国際的に。早い話がアメリカからかかってるわけです。そして、財界も引きずっていこうとしてるわけです。何があっても、という。 これにどのように抗するのかということ。この2点、おうかがいしたいと思います」
谷岡「すでに、山田さんが調べてきたんですが、アメリカ合衆国でも70%以上の人がTPPには反対だという状況になってると思います。ですから、これ1%vs99%、どこの国でも戦いになりつつあると。
私はやはりそれぞれの国々の民主主義というのを信じたい。これを変えるのは、やっぱり国民の力しかないんだと思います。
まず、なぜ『みどりの風』がTPP反対なのかといえば、『みどりの風』が目指している格差の小さい、日本型の共生社会、つまり、日本らしい、そし てお互いに助け合い、支えあい、分かちあうということを旨としてきた日本人と、そしてこのTPPというのは、真逆の関係にあるというふうに思っているから です。
まったく相容れないですね。そして、日本人の現場の創意工夫、そして現場の器用さ、こういう力が高度成長のきっかけになっているのに、多国籍企業 の海外の本社からくるマニュアルに従って、働けと。それ以下もいけないけども、それ以上もやる必要はないと言われれることは、日本人の良さをまったく活か しませんね。
日本の競争力というのは、今一歩の粘りとか、今一歩の創意工夫であるとか、今一歩のみんなの協力であるとか、そういうところから出てきてるわけで すよ。それを否定することによって、日本が豊かで強い国家として発展するわけがないということが、全体の問題としてあります。
この問題は、よく農業の問題も取り上げられますし、農業の問題ということは私たちの食べ物の問題で、いまTPPのなかでは、アメリカが要求してる のは、原産地表記をしないと。それから、遺伝子組み換えの表記はしないと。そういうものを隠して、知らない間に消費者に食べさせるということを飲めと。
それは飲めませんよね。それから、医療の問題でも、どんどん今韓国なんかも含めて、混合診療が流行ってますけども、それによって、3日脳梗塞で入 院した人が308万円、アメリカで要求されたと。そういう社会になれば、金持ちしか医療を受けられないということになりかねない。
こういう様々な問題があって、その日本らしい文化、それから日本らしい環境に合ったこと。例えば軽自動車なんかもそうですけども、そういうものを 全部海外の会社の利益の観点から考えて、非関税障壁だよと言われてしまったら、今に日本語が非関税障壁だと言われかねないじゃないですか」
岩上「いや、そうですよ。実際、入ってますよね。言語というのははっきり入ってますから」
谷岡「ですから、例えば、公共事業なんかの、そういう」
岩上「公共調達ですね」
谷岡「公共調達なんかでも、結局、英語で説明していないのは非関税障壁だと言われたら、公務員で英語ができる人をいっぱい入れなきゃいけなくなっ て、すべてを英語で作るという話になったら、そのためにまた税金を上げなきゃいけなくなるんじゃないですか、ぐらいの話ですよ」
岩上「おまけにその公共事業で、公共調達。アメリカの企業に対して開けということになると、日本の実際、津々浦々、国民の税金で出している公共事業なのに、アメリカのゼネコンが取っていくというようなことになりかねないわけですよね」
谷岡「それは国際競争として仕方がないにしても、日本の仕事のやり方を全部変えちゃいますよね。それで、例えば私が一番気になっているのは、私は大学の学長をずっとやってきて、ある知識人として生きてきましたよね。
そのプラトンがアカデミアを始めて、そして、後進が塾を始めてから、だいたい基本的な、なぜ人類の文明が発達してきたかといえば、私たちが大学を 含めたところで作ってきた知識というのはすべての国民、すべての人々に開かれた、すべての世代の共有財産であるという原理に立って、無償で開かれてきたわ けですよ。
例えば、遺伝子組み換えということを例に上げますと、この歴史は120年から140年ぐらいでしょうね。そして、メンデルの時代からワトソン、ク リックとずーっと流れてきたものがあって、その上に立って、モンサント遺伝子組み換えをやってるわけですよ。最後の一滴を加えた人が、たった120年、 140年の歴史の中で50年、全部自分のものですよと。これは人類の知の伝統に合いません。
例えば、ウォルト・ディズニーが人魚姫。アンデルセンの遺族にお金を払ってるんですか?それから、白雪姫、ドイツの民話。これ、ドイツの人々にお金を払ってますか?でも、自分たちのキャラクターというのは、100年も自分たちのものですよ、とか。これやりすぎですよ。
今ダウンロード法ができましたね。その結果、全部、著作権という形でかけてっていうことをやって、ダウンロードを禁じた。何が起こりましたか?音楽業界は年収が上がりましたか?音楽業界はむしろ解体に近い状況になっていますよ。
結局、作ったのは、お金がないから音楽に近づけない若者たち、そして、歌の流れない街ではないですか?そして、歌のない国々を作っていくことが、なぜ人類の文化、人類の文明というものにとって益があるのか。
確かに、そうやって著作権だとか、そういうものを持っていて、知的財産を主張する会社にとってはそれでいいのかもしれないけども、どこでもみんな真似をしながら、コピーをしながら、替え歌を作りながら、そういう形で音楽というものはずっと来た。
これを網掛けしちゃう。これ、今のフェイスブックで考えたら、新聞の写真を貼りつけたら、著作権違反。それをシェアしたら、元のコメントを書いた人に対する著作権違反って、そんな状況になったら表現の自由、どうなりますか?
だから、私はむしろ知的財産だとか、知的財産を企業のものとして認めますよ。一定程度。著作権も研究費もいるわけだから、知的財産権も。でも、こういうものは人類の歴史の常として、とても抑制的にやってきたし、限定的にやってきた。
そして、できるだけ早く人類全体のものの、そして共有財産のなかに入れるというのが、これは人類が培ってきた知恵なんですよ。この知恵に見事にTPPは逆行してる」
岩上「なるほど。このTPP。いま情報という側面で論じるとたいへんおもしろいことが言えて、いまおっしゃったように、公有化、共有化、シェアしな くちゃいけない情報に関しては囲い込んでいくわけですね。ところが、人々が、これは囲い込まなきゃいけない。なぜならば、これは自分の個人情報だから。プ ライベート情報だから。行政も公にしちゃいけない情報を抱え込んでます。企業にも秘密情報があります。
そのようなものは、しかしツールとして私たちは様々な電子機器を使い、グーグル、ヤフー、ソフト、アップルを使っているわけですけど、こういう機 器を使っているというところを逆手に取って、バックドアをつけて、その情報を盗むと。盗んではいけないものを盗み、その反対のことをやっているというよう なことは同時に起きてるわけですね。
片っ方はTPP。片っ方はスノーデンが明らかにしたNSAによる情報のスヌーピングです。このスヌーピングに関して、あまり日本の政府、そして社会全体の反応が鈍いことに、僕は驚愕と危機感を覚えています。
毎週のように、政府に連絡をしています。警察庁とか、外務省とか、法務省とか。それで、抗議はしないんですか?アメリカに。それから、対策は立てないんですか?
いっさい対策を立てるということは言わないし、はあ?そんなことはありましたね、そんな事件が、ということを言ってるんです。この状況というのはたいへん危険で、国として主権国家として、これでいいのかという問題がありますよね」
谷岡「でも、それ言うなら、未だに首都の上空の、本当に近いところがアメリカ軍が領空を管制してるわけですよ」
岩上「そうですよね」
谷岡「それについて、ほとんど文句をつけてないわけじゃないですか。ですから、そこについては、本当にいまご都合主義的なことで、刹那的短絡な形になって、もうちょっと全体構造の問題として考えなきゃいけないというふうには、きてますよね。
それで、やっぱり、そうですね。毎日、いろんな事件が起きて、いろんなことが起きる。そういうなかで、大きな問題を考えるのが、どんどん社会全体として不得意になってきてるような感じもありますよね」
岩上「これは、情報の主権ということを強く主張していくようなことはお考えなんでしょうか?例えば、谷岡さんが総理になったら」
谷岡「はい。あの、私はやはりできるだけ、総理になることなんてないと思いますけども、でも、やはり自由であるということ。それから、表現というのもそうですし、内心の自由もそうですし、そういうものに対する束縛というのは国民にはかけてはいけない。
その一方で、政府の情報開示であり、いわば情報戦争と言われる時代のなかでの防御というもの、国民を守るための位置づけというものをしっかりして いく。今は、ともすれば反対方向で使われている構造になっているということを私はとても危険なことだと思っていますので、これはぜひ抜本的な対策をかけな きゃいけないというふうに思っています」
岩上「秘密保全法については、どういうふうにお考えがありますか?秋に出てきますけれども」
谷岡「秘密保全法も、これは危ないですね。危ない。例えば、マイナンバー法が今回通りました。あれについても党内でかなり議論をしました。例えば、公平な税制というものをちゃんと考えるということになると、マイナンバー的なものが必要になってきます。
しかし、それは日本として、例えば年金のプログラムであったり、特許庁のプログラムなんかが、何年経ってもできなかったりしてるわけです。
そうすると、もっと大きなものを自前で作れるの?もしくは、海外の会社に委託しなきゃいけないじゃないの?その場合に、海外の会社は日本人の情報というものについて、なにかそこにスパイが入り込む余地とかっていうのはないの?っていうこともあるわけですよ」
岩上「そうですね。今回明らかになったことは、それをNSAという国家機関が」
谷岡「やってるってことよね」
岩上「テロ対策だという脅しを入れて、バックドアから盗み出していくということをグーグルとか、そういう大きな機関に対して圧力をかけてやってしまうということなんですね。970億件のデータを盗ったんですよ。彼らは。犯罪者でしょ。と、思うんですよ。
それを抗議しないというのは、もう理解できないし、そのような形でまとめてしまう。でも、このデータというのは、今言ったマイクロソフトから、アップルからいっさい使わないということはできないでしょ。だから、もう大変なことだと思うんですよね」
谷岡「いや、大変なことですよ。でも、9.11以来、これは米国がそういう形でやってきてしまったことであり、ある意味、3.11以来の日本政府がそれをフォローしているという感じに見えることでもありますね」
岩上「まさにショック・ドクトリンという感じで。こういう流れにストップをかけるということはお考えでしょうか?」
谷岡「当然です。それを守れなければ、もうだから、そこはやっぱり国民の理解をどこまで高めていけるのかということに尽きると思いますよ」
岩上「いま、政府のやってることは、サイバーセキュリティを高めるというふうに言ってます。例えば、こういうような個人情報の流出に歯止めをかける と言ってくれてるのかなと誤解しやすいんですが、実際には日米一体化のなかで、秘密を自分たちで特定していって、国民に対して秘密を開示しないような形に する。だけれども、国民の秘密はどこかしらへ流れていってしまう。
そして、アメリカと日本は非対称で、実際にはアメリカはいろんなテロ対策のために収集した情報というものを例えばイギリスにはシェアしてるかもしれないけど、日本にはいっさい渡してなかったとか」
谷岡「それが、私たちは党議拘束はかけないんですけど、マイナンバー法なんかも、やっぱり3vs1で、私も3の側にいましたけども、反対をした理由なんですね」
岩上「なるほど。なかでも割れるんですね」
谷岡「私たちは党議拘束はかけません。だから、さっきも言いましたように、私たち自身も公平な税制とか、そういうことは考えるなかで、それは歳入庁 を作るという前提ですけども、歳入庁法案なんかも出していた。そこをうまく見た議員もいました。しかし、これはかなり危ない部分のほうが大きいと。
特に私はそういう自分自身が、言ってみれば、研究者であるという部分も持っていますので、余計にその表現の自由であるとか、それからその知識とい うものの普遍性であるとか、そういうことには敏感なものですから、ですから、これはとても賛成できないというところがあって、反対したということがありま す。
で、たとえばACTA(※10)がありましたね。ACTAも、あれが党揃って反対したのは『みどりの風』ですよ」
(※10)ACTA:ACTAは、正当な貿易と世界経済の持続可能な発展を阻害する知的財産権の侵害、特に模倣品・海賊版の拡散に締約国が効果的に対処する、包括的な国際的な枠組。(外務省HP偽造品の取引の防止に関する協定(ACTA)より)
岩上「そうですね。4人でしたね」
谷岡「はい。だから『みどりの風』はそういう意味では、その分野では一番敏感だと思います。さっきも言いましたけども、政治の見える化。現実の分かる化。これを国民に対して、いままであまりにも政治家自身がちゃんてやって来なかったということがあります。
国民は自らの生活が忙しいですし、そして、いろんな時間を使って、情報に接するといっても限度がありますよね。そういうなかで、調べて、それを見える化する、分かる化するっていうこと。
それは一般の普通の人々が分かるように、それを読み解いていくという作業を本当は政治家もやらなきゃいけなくて、そういうことをしっかりやっていくなかから、ジャーナリズムなんかにも拾ってもらえるんだと。
だから、私なんかでもフェイスブックだとかツイッターだとかをこの間ずっと使ってきて、こころがけてきたことは、そもそも新聞やメディアがなかな か取り上げにくいことや、永田町や霞ヶ関のからくりのなかにおいて、行われるようなことというので、外からどうやっても見えないこと。
そういうことをしっかり見える化し、分かる化するということが、おそらく国民も上には見えるけれども、でも最後は主権者にかかってるわけですから、そういう理解を広げていくということも政治の重要な役割として感じてきて、やってきてるところです」
岩上「関連する領域として、そして非常に大きな領域として、ぜひお聞きしたいのは、外交安全保障問題です。最初、冒頭、脱原発、エネルギーの話をし てくださいましたけども、原発を、これはやめるべきだという機運が当然のことながら、一昨年は非常に高揚した。その高揚した時に、民主党政権も2030 年、原発ゼロと言わざるを得ないことになった。
そして、閣議決定までしようとしました。ところが、その閣議決定をするなという圧力をかけたのは、ほかならぬアメリカでした。以降、去年の段階で 第三次アーミテージレポートのようなものが出て、それ以外の、アーミテージ以外の、CSISだの、ヘリテージだの、そういうところも同様のことをいつも 言ってますけれども、そこで並べられたのは、原発の再稼働をしろと。
それから、つまり原子力政策は推進せよと。原発の国際的なコンソシアムから降りるなと。責任を果たせと。なんの責任だ。要するに、アメリカと一緒になってやってるんで、日本に降りられると困るということでもあるんでしょうけれども、そして、TPPに入れ。
集団的自衛権の行使を容認しろと。憲法改正しろと。もうほぼ言われたとおり、野田政権も、そして政権交代しても、安倍政権も、よりドライブのか かった形で、こうしたジャパンハンドラーと言われる、どちらかと言うと軍産複合体の利益を代弁するような元軍人から言われる司令の通り、言いなりになって やってるような状態なんですね。
そうやって日本が動かされている現実もあります。一点は、まずエネルギー問題。もし脱原発をやるとなったらば、相当な圧力がアメリカからかかるだろうと。その時、どう跳ね返して、エネルギーの確保というのをお考えになるのか?
そして、その時に外交はどう絡んで来るのか?どう外交上、やるべきことがあるのか?そして、もうひとつは、安全保障問題ですね。米軍が機嫌を損ねる というだけで怖いと思って、米軍の機嫌を損ねる。米国の機嫌を損ねるということ、極力内容に、国防総省と国務省の顔色をうかがいながらの安全保障政策を日 本はやりつづけているわけですけども、果たしてこれでいいのか?
一方で、アメリカという国は、そこまで言いなりになって、背中を押されるままに中国との緊張を高めるようなこともして、挙句ビンタを張るのはオバ マだったりするわけですよ。安倍さんはものすごく冷遇されました。2月の首脳会談にて。逆に習近平は、大変厚遇されています。
韓国の朴槿恵大統領も厚遇されております。これは歴史認識問題も絡んでるし、行き過ぎた右傾化ということは許さない。大日本帝国への回帰。それは 許さないというメッセージも明らかに突きつけられてるだろうと思うんですけども、それが理解してないようで、相変わらず、いま来日してますけれども、アー ミテージ、ナイ、マイケル・グリーンたちとつるんで、この人たちの言うことさえ聞いていれば、と。
なんか傍から見ると、なんか悪さ仲間だけの言うことを聞いて、アジアだけでなく、世界での孤立を深めているように見える。これ、エネルギーとも関 わります。安全保障とも関わります。日本のあり方とも関わります。この大きなテーマでありますけれども、谷岡先生はどのようにお考えになります?」
谷岡「同感するところが多いですね。今のお話は。それで、まずひとつ、申し上げたいことは、アメリカとの関係というものは、いまおっしゃったように、本当に非常にオフバランスな関係に今なっちゃってるというふうに私は思います。
お話の通りで、占領憲法を辞めたい人たちが新たな占領については、どうしてここまで嬉々として、そこに付いて行くのかということは、非常に倒錯してるなというのが私どもの感じ方です。
私もよくワシントンに行きます。一年に2回程度はワシントンにずっと行っています。カーター元大統領に、原発の問題で独自のお話を一対一でさせて いただいたりもしましたし、そして、アメリカに行くたんびに、今ではもっとリベラルなシンクタンクの人たちは、都子次はいつ来るんだ?というふうに言われ るような感じがあったりして、結構たくさんの人たちと話をします。
大学でもジョージ・ワシントンだとか、ジョンズホプキンスだとか、それからワシントン大学とか、そういうところは定点毎回、おじゃまをしてます し、それからこの原発の事故があってからは、Concerned Scientists(※11)とか、そういう人たちのところへも行って話をして常時つながっている状況は作っています。
(※11) 憂慮する科学者同盟UCS; Union of Concerned Scientists
10 万人以上の市民と科学者から成る国際的な非営利団体。1969年に設立、より清潔で、より健康的な環境と、より安全な世界を築き上げるために科学的な活動 を行っている。活動の対象は、環境、原発、遺伝子操作、軍事機密まで幅広い分野に及んでいる。科学的な分析と情報公開を中心として、環境保護団体などの過 激なパフォーマンスは見られない。しかし、軍事衛星(日本では情報収集衛星と呼ぶ)の軌道要素を公開するなど、情報公開それ自体が国家にダメージを与える ケースが出てきている。(はてなキーワードより)
そういうなかで、彼らも不思議がっているんですよね。なぜ日本は、あるいは日本の政府、日本の政治家は、ナイとグリーンと、そしてアーミテージのところばっかり行くんだと。グループAと言われて」
岩上「グループAと」
谷岡「はい。グループAというふうに彼らは言っています」
岩上「どういう意味ですか?Aというのは」
谷岡「AはアーミテージのAだと思いますよ」
岩上「ああ、なるほどね」
谷岡「そこがすごくいびつ。これ、占領時代からそうなんですが、占領ということは軍が占領するわけだから、結局、ペンタゴンなんですよね。国防省な んです。私、アメリカで教えてもらえたことは、どこの国も、アメリカと外交を持つときには、国務省とやっていると。日本だけが国防省が出てきて、国防省中 心になる。
2プラス2とか言うんだけれども、普通、外交というのは、だから外務省、あるいは国務省みたいなところがやるわけじゃないですか。それに関して、外 交そのもののところに、国防省であり、防衛省が出て行っちゃう。それをやり始めることから、まず整理できなくなっちゃう、という構造が始まってます。
だから、本当にアメリカとちゃんと付き合う気があるなら、やっぱりこれ、独立してから、だから独立をして、こんな、今回なんでしたっけ?安倍さんがやったサンフランシスコ条約で」
岩上「はい。主権回復の日」
谷岡「主権回復」
岩上「してもいないのに」
谷岡「だから、主権回復をほんとうにしてるんだったら、普通の国のように、外務省、国務省同士でちゃんと話ができる、外交体制をまず築かなきゃだめです。それから、もうひとつは、やはり今はオバマ政権、民主党政権なんですね。
例えば、CSISを始めとする、つまりさっきのマイケル・グリーンだなんだと。ああいうところというのは、基本的に共和党系のシンクタンクです。 民主党系のシンクタンクなんかもいっぱいあるんですよ。アメリカは大学の大学院でも、そのシンクタンク的役割をするところがいっぱいありますし、そういう ところはたくさんあるので、やはりもっと幅広の多様なところとしっかりやる必要性があります。その辺を韓国とか中国は、ワシントンで実にうまくやってい る。
日本はものすごく下手なんですよ。だから、今言ったように、中国が厚遇される。韓国が厚遇される。それはいろんなところを韓国がちゃんと使っていまして、そういうチャネルを持っている。そういうなかから、当然だなと。中国ともむべなるかなというふうに思います。
また、向こうの人たちは、韓国系で帰化したアメリカ人である人。中国の帰化したアメリカ人の人たち、これ実に上手に使っている。日本は日系の人たちなんかがちゃんと使えてないなというところがあります。
また、外務官僚というのが実は一番世襲制が多いところなんですね。外務省の外交官というのは、ものすごく世襲が多いんですよ。割合、一番高いと思います。つまり、昔からの、こんなもんだよ、こういうもんだよという形でやってる。
先ほどの出ましたような、21世紀の情報社会のなかでの情報戦争というものができるような時代の、そういう新しい国際関係であるとか、まったくそういうところではなくて、お父さんがやっていたようにやっている息子であり、娘がいるみたいな感じになっちゃったんですね」
岩上「なんでも、そうすると前例踏襲になりますよね」
谷岡「ですから、この採用の仕方。その条件。そして、そのリクルートの仕方。また、たとえば下積み時代の研修のさせ方。そして、やっぱり世襲に偏らないということを含めて。だから、みんなよく政治の世襲ということを結構見てるんだけども、ジュニアは誰だとか。
外交なんてそういうのやってませんよね。だけど、そういうふうに外交って開かなきゃいけないことなのに、そういうふうに閉じ系でやっていて、そもそも外交になるわけがないという構造になっています。
こういうもののバランスを時間かかるかもしれないけど、ちゃんとシフトを根本的にやっていくというところから見ないと。例えば、さっき私も重要な問題だと思いますよ。
その沖縄の基地の問題も重要だし、その集団安全保障の問題も重要だし、アメリカとのエネルギー提携の日米原子力協定のそういう問題がとても重要だ ということは、私も認めますが、しかしながら、それを頭に置きながら、いつも口角泡を飛ばしながら話しているということよりも、そういうものを作り出して いる元にあるものの、この質的な部分というのをきちんと見ていって、そこをしっかりとやっていかなきゃいけないと」
岩上「どうやるんですか?」
谷岡「私、だってこの間もやってきましたよ。例えば、外交官だったら、自分の娘を高校まで国にお金を出してもらって、私立学校なんかにずっと行かせてもらってたんですよね。そういうのを、日本で義務教育を、中学までなんでそんなことをやってるの、みたいな話で。
外交の当たり前の特権みたいなことに対しても言ってきた。その一方で、外務官僚の数、ぜんぜん足りないんじゃないの?と。
こういう形でもっと本当に情報収集をきちっとやるような形でしていかなきゃいけないんじゃないのと。そういうことは、ずいぶんやってきたし、また だから、私はいじめようとしているばっかりじゃなくて、彼らたちにとってプラスになることもいっぱい言ってきて、妙なところで予算を削って、妙なところで 増やしてるようなことについてもずいぶん言ってきました。
これは外からは見えにくいと思いますけれども、実はそういうことが少しずつ質を変えていったりすることに、ひとつはなるんです。それから、もうひとつはさきほどの問題で重要なこととして、指摘をしたいのは、この原子力の問題ですけども。
原子力の問題は、今は全部日本の会社があと多くの3つ、フランス1つと、アメリカ2つの原子力会社とひっついていて、国際原子力コンソシアムみたいな感じなものが、できてるわけですよね。
それで、その日本は責任を果たせみたいな話に実はなってるんだけど、実はこれは、ていよくアメリカもフランスも日本に押し付けちゃった、とみなすほうが私は正確ではないかというふうに思っています。これが日本の役割だよという形で」
岩上「未来のない産業に、言ってみれば、原子力だけが1つの不良債権ではなくて、原子力産業自体が不良債権化していく。その不良債権産業まるごと」
谷岡「日本に押し付ける。たとえば、これが非常にそういうことが分かるかというと、福島以来、日本で廃炉になった炉というのは4つですよね。福島の 1号機、2号機、3号機、4号機です。つまり、それ以外は廃炉にしてないんですよ。その間に、アメリカは10基、廃炉が決まりましたよね。いま20基ぐら い廃炉の方向へ決まろうとしているという状況がありますよ。
アメリカは明らかに脱原発なんですよ」
岩上「そうですよね」
谷岡「アメリカが脱原発でありながら、自らが持っている原子力産業の残滓と言いますか、残りと言いますか、それは日本に買い付けて、日本はやらなきゃいけないんだよ、みたいなことを言ってしまっている。
それは、もう明らかにそういう構造になっている。この大きな構造の見え方ということが、まだ日本の国民にしっかりと伝わっていないということだろうと思いますよね」
岩上「サンオノフレ原発の廃炉(※12)に向かっていく住民運動から、そして、それを受け入れていくプロセス。そして、欠陥はやっぱりちゃんとメーカーに責任を取らせるプロセスと。これなんかはすごく重要ですよね」
(※12)三菱重工製の配管欠陥で米サンオノフレ原発が廃炉へ!問われる「原発輸出」の損害賠償リスク :堀潤2013年06月09日現代ビジネス
谷岡「だから、今の日本の状況というのは必ずしもアメリカのような状況のような形にならないのかもしれませんが、例えば、さきほどの電事法の問題で 出した原電。これをなくすとか、つまり原電とかもんじゅとかいわれるもの。あれが実は日本の原子力ムラの結節点になっているわけですよ。
だから、もんじゅにも各電力会社がみな、お金を出さなきゃいけなくなっている。もちろん国家のお金もでている。それから、原電もそういう構造になっている。そういうものが実は本当はもう原子力については疑いを持ってる。
例えば、東北電力が東電を提訴したり、中部電力なんかは、浜岡しか無いわけですから、場合によったら、送電なしでもやっていける。沖縄ははっきり それなしでやってますよね。そういう形のなかで、日本のなかでバラつきが出てきてるけども、そういうもんじゅがあっちゃったり、原電があっちゃったりす る、その結節点があることによって、そこで結社のなかに組み込まれちゃってるというような構造がありますね。
そこを解くことが実は重要で、むしろ反対に原子力ムラに人たちが、なぜ今回の問責で潰れた電事法がそれほど大切だと思っていたかといえば、まさにその結節点がいま非常に危うくなっているからなんですよ。
だから、私はこの電事法の原電温存法案が廃案になったということは、ものすごく実は大きなことになりうる可能性があって、その重要性に国民の皆さ んが気づいていただいたら、原電、もんじゅ、もう持たなくなってますから、ここを早く消していくということが、日本の筋道だと思いますね。
私は、最初に申し上げたように、現実的にリアルにものごとをやっていきたい。その、いわゆる『これけしからん!』話をいくらやっていったって、無 理だと思うんで、そういう形のことをやろうと。それから、日米関係のなかでの安全保障の問題で、重要な問題というのは、一番重要な問題は、地位協定の問題 だと思っています。
すぐに集団自衛権のためのうんぬんとかって、なんていうか、雲をつかむような話をしてもしょうがないので、地位協定をきっちり見直すということ。 首都の領空であり、そして、例えば沖縄の人たちがみずからの裁判権ということに、二流、三流の植民地のような時代のようなまんまでいるということ。
これに対して、しっかりやっていかなきゃいけないし、大事なことは、アメリカの国民なんかも知らないけども、アメリカというのは、実はすごくっ て、非常に多様なシンクタンクとか、多様な運動体なんかがあって、そういうことで、日本のいわゆる考え方というものに賛同したり、理解してくれる人たちと いうのは、実はたくさんいるんですよ。
むしろ、そういう人たちもいるし、また、メディアなんかでもそれを取り上げてくれるメディアもあります。だから、その辺のところは、アメリカの一部だけをアメリカといま思わせられているところから、その呪縛から日本国民自身が解かれなきゃいけない。
だから、こういう機会に、そのことをみなさんに伝わるような形で発信できるというのは、私はすごく幸せなことだと思います」
岩上「そうは言いながらも、これだけ、特に去年から猛烈な勢いで日本が右傾化をし、そして右傾化をするという1つのきっかけが、尖閣などの領土問題 であって、中韓とのあいだの関係が悪くなり、巷では、韓国人、朝鮮人を殺せという叫び声を挙げるデモが横行するようになり、それがはなはだしくなり、そし て、そういう空気を背景にして、自民党が勝っていくという現実があるわけですね。
この近隣諸国との緊張の激化。そして、それを、いいぞいいぞ、だからF35を買え。イージス艦を買えよ、というようなことを言うジャパンハンド ラー達がいて、ケビン・メアが文藝春秋でそういうことをはっきり書きました。そんなような状態を、結果として、それが自民の圧勝につながっているというこ とを見ますと、これをどうひっくり返したらいいのか」
谷岡「それは、メディアの問題であって、政治家の問題じゃないですよ。はっきり言って、私たちはその問題について、なんて言うんですか?国民が支持 してもらえない限り、私たちは国民に選ばれるしか無い存在ですから、国民に支持されない限り、そして、国民がそうやって応援して、そういうことをきっちり 言う議員を増やしてくれない限り、どうしようもない状況がひとつあります。
ただ、それはだからといって放棄しているつもりはぜんぜん無いんですよ。この、あまりに跳ね上がった右傾化があるから、アメリカはちょっと心配しだしてるんですよ。ヨーロッパの国でも心配しだしてるんですよ。カナダやオーストラリアも心配しだしてるんですよ。
だから、別に黒船頼みをするのは嫌だけれども、そういうところが出てきて、だからアーミテージたちも焦ってるんですよ。だから、そのグループAをある意味、慣れてるからということで、本来、共和党系なのにオバマがずっと使ってきたわけですよ」
岩上「使ってきた」
谷岡「オバマは民主党の大統領ですよ。だけど、一番そういうことで手馴れていて、普天間やなんかの問題も含めて、ずっと過去からの経緯もあるんだから、ということで、あえて言ってみれば共和党系の人たち、人材をこの間、使ってきた。そして、それを聞いてきた。
そして、その間、その挙句の果てに、出てきた安倍政権であり、尖閣問題であり、中国、韓国、アジアの国が総スカンを送り、民主主義国家なのかしらと。平和的な国家なのかしらん、ということが疑いを持たれるような、そんな形に今なってきている。
だから、このグループAの言うことを聞いて、対日本政策をやってきたことは良かったのだろうかと、今アメリカは考え始めてると思いますよ」
岩上「なるほど。先生、さきほどいろんなリベラルなシンクタンクその他との接触を持っていると。考えの違う人たちと持ってると。その人たちは自民党 の改憲草案、これを逐条でどういうことが書いてあるのか。それは憲法9条のことだけ。あるいは、集団的自衛権行使容認のことだけ書いてるんじゃない。
そうではなくて、基本的人権を制約するとか、天皇を元首の神聖国家を作ろうということで、立憲主義が否定されて、拷問の絶対の禁止は『絶対』を 取ってしまうような条項があったという、とてつもない内容ですよ。これ、大日本帝国を再興させようとしか思ってないような憲法案であると。
これは、多くのそういう人々に知られてるんですか?」
谷岡「まだですよ」
岩上「まだですか?」
谷岡「これからだと思います」
岩上「英訳なんかも含めて、足りてないということですか?」
谷岡「これからだと思います」
岩上「これから?」
谷岡「はい。だけど、日本は大丈夫か?という危惧の声が近頃、だんだん上がってきてることは事実です。そして、それに国民が追いついていないんだけども、これは、ある意味で、しかるべく起こっていくことだと思うんですね。
ただ、情報操作もそのあいだでものすごく行われると状況とのせめぎあいということだと思います。でも、リンカーンが言ったみたいに、一部のどんな 賢い人でも、短期間騙せるけども、多くの人民を長期間にわたって騙すことはできないと言った。私たちは民主主義を信じるのであるならば、それを信じて、弛 みなく努力をし続けるしかありませんね」
岩上「最後の、たぶん、もう時間ないと思いますんで。谷岡さんの、そして『みどりの風』としての憲法に対する考え方をお聞かせください。憲法の改正 については、可能性に留めるべきだという発言をされているということは聞いております。この真意をお聞かせ願いたいと思います」
谷岡「はい。超長期的には、憲法改正されるべきだと思っています。ただし、条件があって、それは主権者からの発議というものを主体とすべきものであって、権力の側からではない、というふうに思っています。
そして、その権力を縛るための憲法というものの、いわば基本的な性質において、権力の側が変えやすくするというのは、言語道断な話であって、96 条の改正というのは、断固ありえないというスタンスです。そして、私たちは日本の民主主義、国家主権、国民主権というものが、成熟過程にあるというふうに 思っています。
もっと成熟していく必要がある。そのために、さきほども申し上げているように、私たちは国民とともに、ポスト311の政治を作っていきたいと。
なんか永田町や霞ヶ関で政治を占有化するような構造、これそのものを風穴を開けていきたい。それが『みどりの風』だということでありますし、また、憲法を変えるまでの過程のなかで、ある意味で、選挙というのはある意味で総合得点を争うんですよ。
だから、経済うんぬんといろんなことで自民党がやっぱり一番、いろんな文句があるけれども、高いのかなと入れる人が多いという形の中で、総合得票にすると、平均点が高いということになっちゃうんですね。
ところが種目別なんですよ。いろんなイシュー、争点という問題でいくと。例えば、脱原発だと過半数の人が脱原発を望んでますね。こういう問題につ いて、やっぱり種目別でもやらなきゃちゃんとした民意は反映できないわけですから、総合得点ばっかりでは。だから、私は国民投票をしっかりとやっていく。 これは『みどりの風』のコンセンサスで、一番、この憲法問題で強く言いたいことです。
憲法改正する前に、国民投票を重ねて、日本の民主主義、そして国民主権の成熟を図りましょうよと。そして、例えば、脱原発でやってみる。それか ら、18歳にするのか、20歳にするのか、選挙年齢ということ。これこそ国民自身がどこから大人か、なんて問題は、政治的な問題というよりは、むしろ国民 に決めてもらいたい。
あるいは尊厳死か否か。こういう、例えば、あの世に渡ってしまうような問題というのは、この世の代表者たちである国会議員たちだけで決めちゃいけ ないと私は思っていますので、そういう意味において、国民自身が決めるにふさわしいようなテーマ。こういうものをしっかりと一つ一つの争点で、国民とも やっていく。そういうなかで、いずれ憲法という問題が起きていく。国民投票にも。
また、その国民の主権者というものの自覚、成熟、これを促していくという経路を通らない限り、憲法の改正というのは、それがどの条文であっても、私たちは反対だということなんです」
岩上「超長期的には改正すべきとおっしゃいましたけど」
谷岡「改正の可能性を認めるべきですよ」
岩上「改正の可能性を認めるべき。ここの条文は変えるべきというお話はいま胸のなかにあるということではなくて?」
谷岡「ありません」
岩上「改正はまったくされない不磨の大典であっては、それはそれで困るという意味ですね」
谷岡「はい。私は国民が作る憲法は、国民が変えていいというふうに思っていますが、それは理念の問題であって、今の現状で変えるべきだとも、変えられるとも思っていないです。それは、ぜんぜん違う話のことを言っているということです」
岩上「なるほど。あくまで理論上、理念上、変える可能性があるべきだ。変えれるものであって」
谷岡「ただし、国民の側からね。国民が主権者として、変える権限というのを持つべきであって、要は、権力者と言われる、ある国家なるもの。そういうものが変える可能性も権限もあるとは私は思っていません」
岩上「なるほど。最後の最後に、本当に最後にします。1つだけ。この都議選がありました。そして、今度、参議院選なんですけれども、過去に国政選挙 の前に都議選みたいなものがあった場合、だいたい結果は連動するという嫌な前例があるんですよ。それを見ていくと、昨年の衆議院選挙、そして、今回の都議 選を見ても、自民圧勝という形。自公、圧勝です。
そうすると、参議院選挙も厳しいのではないか。今回、共産党は躍進いたしました。一方、自公がたいへん強い。この中道リベラルというような、各政党がたいへん落ち込んでいるわけですね。そして、投票率自体も非常に低い。
いろんな人々が政治に諦めを感じてしまっている結果、誰が得をして、誰が損をしてるのか。非常に鮮明になってきている気がいたします。
この状況について、お考えを。そして、見ている方、いらっしゃいますから、有権者の方々にも、お伝えしたいメッセージがありましたら、お話願いたいと思います」
谷岡「私、この根本原因は、やはりあれほど期待された民主党の国民に対する不誠実、裏切り。あれだけ期待して、本当にそのために、選挙に初めて行ったような人たちが多い中での、あそこでのあのひどい裏切り方。
そして、その官僚の手のひらに乗ってしまって、そして反省してるんだか、してないのか分かんないようなこの状況。これに、国民がもう本当に政治に 対して絶望してしまったということであり、ある種の、組織票というものを固く持っている、例えば共産党なんかは別として、今回、中道の落ち込みが低いとい う状況に、まずなっているというふうに私自身は思っています。
そして、私もこの選挙で、一番最大の難しさというのは、むしろどこの政党とどういうふうに比較するのか、という問題であるよりも、そうやって閉ざ してしまった国民の心をどうやって開けることができるのか。『みどりの風』を本当に見ていただきたいのは、私たちもその国民への裏切りが許せなくって、だ から、たもとを分かったものです。
私たちは、国民の代表である筋を通したくて、信念を通したくて、あの裏切る党のサラリーマンではいない、ということを決意して出た。そういう政治家もそんなに数多くないかもしれないけども、まだいるのだということを、ぜひここで皆さんに訴えたい。
そして、もう一つは、行かないということは、結局は認めるということにほかならないんだということです」
岩上「選挙に行かないという意味ですね」
谷岡「はい。そして、みなさん無力感を感じてると思います。でも、みなさん、無力じゃありません。そして、選挙という場面では、誰も有力者も無力者もいません。みんな一票という微力。この一票の微力というものが積み重なって、この国が方向性を決めるということ。
そして、それによって変えることができる、ということを信じるということ。これが民主主義なんです。総理も一票だし、みなさんも一票。あなた、一人一人が一票だと。この一票だというもの、これによって変えるしかない。
心を閉ざしても、みなさんはこれから起きる政治の犠牲者になります。水は高いところから低いところへ流れるけれども、お金は低いところから高いと ころに流れがちです。そして、それは必ず、1%の人たちを有利にするけれども、アベノミクスというのは、はじめから当選者が決まっている宝くじです。
99%の人はお呼びじゃない。そして、いつも大資本家だとか、大金持ちだとか、大企業だとか、外国資本だとか、その人たちが当選者になります。でも、政治はそれを再分配するためにあるんです。
そして、政治というのは政治の場面では、一億円持っている人と100万円持っている人だったら、100万円持ってる人は太刀打ちできないけれど も、政治の場面ではみんな一票なんです。この政治の場面でだけ、みなさんは勝負をかけられる。どうか、そのことを思い出してください。
選挙に行ってください。そして、『みどりの風』はみなさんと共に一緒に変えて行きたいと思ってます」
岩上「はい。ありがとうございました。最後にアピールもまとめていただきましてありがとうございます。大幅にお時間を過ぎてしまったかもしれません。ということで、谷岡先生に『みどりの風』についてお話をうかがいました。先生、どうもありがとうございました」
谷岡「どうも、こちらこそありがとうございました」
岩上「子供被災者支援法については、一年棚晒しにされた。このまま、本当にこの法律っていうのは死んでいくのかという不安と言いますか、懸念があり ます。僕らは、IWJはこの問題はかなりしつこくずっと追い続けてきたつもりですし、これからも追い続けたいと思いますので、みなさんがこれをなんとか復 活させて、蘇生させていただくというのを」
谷岡「はい。私たちは、被災者にこういうふうにして頂戴といったら、申してますとか、云々とか官僚が答えたら、分からないんですよ。井戸川さんは分かるんですよ。だから、分かったつもりの人間ではもう攻め切れないところまで来てるから。
だから、いわゆる永田町や霞ヶ関の、いわゆる『ずるのからくり』みたいなものは、私たちが分かってます。攻めどころも分かっています。しかし、その被災者との関係における事実というものになると、井戸川さんでないと分からないことがある。
ここで、タッグ組んで、やるしかないんだという結論のなかで、井戸川さんも『みどりの風』と一緒にやることを賛同してくれて、私たちはそれをお願 いして、ということで、私はこの子供被災者支援法を実現する上では『みどりの風』と、そして井戸川さんのマッチングの、チームみどりの風しか、前に進める ことはできないと思っていますので、そのための今回、参院選に井戸川克隆さんに立っていただきました」
岩上「なるほど。井戸川さん、実は、井戸川さんのライフストーリーを延々聞くインタビューをいまやりかけていたところだったんですよ。その前半を終 わったところで、井戸川さんが出馬っていうのを突然聞いて、ええ?って後編やらなきゃということで、近頃、後編のインタビューも済ませて、選挙前までに、 それは選挙の生々しい話をするわけじゃないんですけどね。
福島のひとりの福島県民として生まれ育って、今日どうやって生きてきて、そして、地震震災に、どうめぐりあってしまって、どのように生きざるをえ なかったかという、ライフストーリーをお聞きしていますので、それもぜひ、みなさんお楽しみにしていただきたいと思います。百人百話の一部としてお送りす る予定です。
ということで、どうも谷岡さん、ありがとうございました」
谷岡「ありがとうございました」
岩上「みなさん、ご視聴、ありがとうございました」
【文字起こし・@sekilalazowie, 校正・柴崎】 |